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判決をだし、生存可能期間の限定に関する初の最高裁判例として注目され、マスコミにも報道されました。
植物状能患者の余命は、一般健康者と同列に論じがたいところですが、信頼できる大規模な実態調査も乏しく、それだけに、見解が分かれ、下級審判例も、①生存可能期間の確定は不可能であるとして、定期金賠償によるべしとする立場②生存可能期間を、通常人の平均余命とする立場③平均余命より短い年数に限定する立場があります。
②が多いと思いますが、近時は③も増えてきて、今回の最高裁判例をみるに至りました。
このケースは、事故当時七歳の男児が約二〇か月後、症状固定(後遺障害等級1級)して、植物状態被害者となったものですが、1春、控訴審とも、逸失利益、将来の介護料等につき、生存可能期間を四〇歳までとし、四〇歳までの分しか認めませんでした。
・四〇歳までが目安になるかしかし、本判例は、前述のとおり四〇歳までと限定したことは認容できるとしましたが、四〇歳を越えて生存できなくなったということは、特段の事情のないかぎり、事故に起因するものであることが明らかであるから、被害者の逸失利益としては、当然、就労可能上限年齢(通常六七歳とされている)までの逸失利益を算定、認容すべきであるとして、四〇歳を越える部分の審理のやり直しを命じました。
この垂尚裁判例と前後して、やはり余命年数を限定した例として、二七歳の男性につき、控訴審の弁論終結時から10年(事故から18年、症状固定から7五年となる)とした判決(東上昼尚裁・昭和六三年二月二九日)、一六歳の男子につき、事故時二〇歳未満の患者の場合は、それを否定するに十分な特段の事由がないかぎり、その余命は満四〇歳程度までとした判決(京都地裁・昭和六三年一〇月二八日)があります。
後の京都地裁判決は特別な証拠もなく、杢重荷裁判例を引用して四〇歳程度までとしていますが、本判例の四〇歳という点が独り歩きすることについては疑問です。
症状とそれに対する医療看護の体制、従来の経過などにより、個々のケースごとに判断すべきものでしょう。
むち打ち症の存続期間心因性の場合は過失相殺も可・心因的要因による損害の拡大いわゆる「むち打ち症」の被害事故の場合に、被害者がまだ完治していないとして治療を継続し、治療費や休業補償費等の損害額が拡大すると、加害者のほうでは、事故の態様や当初の被害者の言動からみて、被害者の愁訴は異常ではないかと疑いをもち、示談のタイミングや損害賠償額をめぐって争いになり、訴訟にまで持ち込まれることが少なくありません。
損害の拡大について、被害者の素質へ気分へ性格などが作用している場合、加害者は、ある程度減額して賠償責任を認める(割合的認定をする)のが普通ですが、減額を認める法的根拠についていろいろな見解があって、垂尚裁判例が待たれていまし美。
損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、公平の理念に照らし過失相殺の規定を類推適用してこれを掛酌できる、と判断しました(最高裁・昭和六三年四月二一日判決)。
事故は軽い追突です。
肉眼では識別できない程度の凹損で、後車の運転者Aは直ちに下車し、前車の運転者甲、助手席にいた甲夫人に負傷の有無をたずね、念のため医師の診察を受けるよう、また事故申告のため警察への同行を頼みましたが、甲夫婦は、異常はないし帰りを急いでいると述べて立ち去りました。
しかし、甲夫人の治療は、事故の三日後に入院してから一〇年以上に及びました。
うち入院は三つの病院に通算すると四年一〇か月になります。
各病院の診断は、外傷性頭頚部症候群、頭部外傷後遺症、大後頭神経痛など、いわゆるむち打ち症と、その後遺症というべきものです。
加害者のAは、事故当初の状況から甲夫人の治療に疑惑を持ち、事政一か月後に一〇〇万円要求してきたことにも不信感を持ち、自賠責保険による弁済の他は治療費の支払いもしなかったため訴訟になりました。
・過失相殺の法理を適用一審判決は、事故後三年間までの間に発生した損害のうち六割の限度で、二審判決は、事故後三年間の損害のうち四割の限度でAの賠償責任を認め、本判例も二審判決を是認して、つぎのように述べています。
「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって、通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を勘酌することができる」と。
そして、甲夫人について、その訴えている症状のうちには、甲夫人の特異な性格に起因する症状も多く、その回復への自発的意欲の欠如等があいまって、適切さを欠治療を継続させた結果、症状の悪化とその固定化を招いた、つまり損害の拡大について、甲夫人の心因的要因が寄与していることは明らかであると認定しました。
そして、六割の過失相殺をしました。
首が長いことで傷害が発生しても賠償額の減額事由にはならない身体的特徴は掛酌されない・身体的・肉体的特徴による損害被害者が有する身体的・肉体的特徴と加害行為が競合して傷害が発生した場合、あるいは損害が拡大した場合、身体的・肉体的特徴が、損害額の決定に当たり考慮されるでしょうか。
Yは自動車を運転して走行中、Ⅹが運転する自動車に追突しました。
Ⅹは本件事故が原因となって、頚椎捻挫、頭頚部外傷症候群による視力低下などの傷害を被りました。
さらに、Ⅹは、平均的体格に比べて首が長く、多少の頚椎の不安定症があるという身体的特徴がありました。
この身体的特徴に本件事故による損傷が加わって、Ⅹにバレリユー症候群等が生じました。
また、頭頭部外傷症候群による眼症状およびバレリユー症候群については、首が長いというⅩの身体的特徴が原因となって、症状が悪化ないし拡大しました。
・身体的特徴は掛酌されない控訴審の判決は、Ⅹの首が長いという事情等を掛酌し、民法七二二条の過失相殺の規定を類推通用して、本件事故によりⅩに生じた損害額のうち四割を減額しました。
これに対し、Ⅹが上告したのが本件です。
本判決は、次の理由により損害賠償額を定めるに当たり身体的特徴を掛酌することができないと判断しました。
・人の体格や体質は均質ではなく、日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められる程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として予定されている。
・したがって、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情が存在しない限り、被害者の身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり掛酌することはできない。
・Ⅹの身体的特徴は首が長く、多少の頚椎不安定症があるが、これは疾患ではなく、このような身体的特徴を有する者が1般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を要請されるといった事情はないから、特段の事情が存在する場合とはいえない。
・したがって、Ⅹの身体的特徴と本件事故による加害行為とが競合してⅩの傷害が発生した損害が拡大したとしても、損害賠償の額を定めるに当たり、身体的特徴を掛酌することはできない。
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